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究極の遺伝子編集技術「CRISPR(クリスパー)」について

 

CRISPR (クリスパー)  究極の遺伝子編集技術の発見

CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見

 

 ずっと気になっていた「クリスパー」という単語。一体なんぞや・・・。

初めて聞いたのは大学での講義で、ちらっと耳にしたぐらい。ツイッターとかで最近よく「クリスパー」という文字が入っている記事を見る。少し調べてみると、今の科学界隈で熱いらしい。

 

 

そんなこんながあって、この本を読んでみたので早速レビューしていきたいと思います

 

第一部 開発

 

第1章 クリスパー前史

 

第2章 細菌のDNAに現れる不思議な「回文」

 

第3章 免疫システムを遺伝子編集に応用する

 

第4章 高校生も遺伝子を編集できる

 

第二部 応用

 

第5章 アジア象の遺伝子をマンモスの遺伝子に変える

 

第6章 病気の治療に使う

 

第7章 核兵器の轍は踏まない

 

第8章 福音か厄災か?

 

エピローグ 科学者よ、研究室を出て話をしよう

 

 

 

そもそもCRISPRとは、細菌(バクテリア)DNAの領域を指し、「クラスター化され、規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)」の略である。

今となってはクリスパーは遺伝子編集を簡単に行えるツールとして見なされているかもしれないが、それは基礎研究を応用して生まれたものである。元々は細菌が有するウイルス感染しないための免疫機構だ。

          

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 軽くその仕組みを説明すると、細菌は過去のファージ感染の記憶を回文(図の黒く塗りつぶされたひし形)の間に埋め込まれたスペーサー配列(番号が振られた四角)という形で保存している。そして、将来ファージと接触した時にこの保存した情報をもとに過去に自分を攻撃したファージを認識し、破壊するするのだ。

 

では、どのようにして細菌が持つ免疫システムを遺伝子編集に応用していったのだろうか。その応用の段階の最初のステップとして、ファージを認識して破壊する仕組みのより詳しい理解が必要不可欠だった。そして、研究の結果からファージDNA配列を標準化し、破壊する能力を与える機構としてCas9酵素,crRNA,tracrRNAが必要なことが分かった。crRNAが切断部位にCas9を誘導し、Cas9はガイド役のRNAと相補性のあるDNA配列をみつけ、切断する。

そして研究者たちはcrRNAとtracrRNAの二つの機能を持つガイドRNAを作り出すことに成功した。ガイドRNAが生み出されたことによってCRISPR-Cas9によるプログラム可能なDNA切断が可能になったのだ。

 

こうしてできたクリスパーによって従来の遺伝子編集がずっと簡単なものになった。しかもコストは数十ドルで済むようになった。(今までの技術だと2万5000ドルぐらいかかっていた)

 

本書の後半ではクリスパーの第一人者であるジェニファー・ダウドナ博士のクリスパーの使用に関する苦悩が綴られている。そしてダウドナ博士は、科学的プロセスとそれが及ぼす影響に対して科学者だけでなく、一般市民も共に責任を負って考えていくべきだと強く主張している。

確かにクリスパーの社会に対する影響の大きさやその効果、適切な使用範囲を一般市民も考えていかなければ、倫理観における超えてはいけない一線を超えることもありうるのだ。クリスパーは人類の未来に大きく影響を及ぼせられる力を持っているからこそ、その使用については慎重に議論する余地がある。

 

 

この本を読んでクリスパーが遺伝子編集として使われるまでの経緯やその仕組みがよく分かった。もちろん自分が上記で書いた説明はほんのほんの一部に過ぎず、まだまだ本書にたくさん、クリスパーを使った現在進行中の研究などが書いてある。

 

興味があればぜひ、読んでみてください。